佐賀町を歩く ~ セメント工場・清澄排水機場

深川あたりは、江戸の中心地だったので興味深い史跡が点在する。

これもそのひとつ。

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平賀源内電気実験の地

f:id:garadanikki:20220122150622j:plain石碑が建っているのは江東区清澄1丁目。

読売江東ビルの一角である。

源内は48歳の時この地で、実験を行ったらしい。

 

石碑の横にはこんなことが書いてあった。

源内は享保13年 ( 1728 )、高松藩小史の家に生れ和洋の学を勉強し物産館の開設、毛織物の試作、源内焼の製陶、石綿布の創作利用、水準器寒暖計の創作等かずかずの発明工夫をなし、かつ神霊矢口渡の戯作者げさくしゃでもある。平賀源内は、わが国最初の電気学者にして安永5年(1777)エレキテルを完成し、この付近深川清住町現在の清澄1丁目私宅において電気実験を行ない安永8年(1780)51歳にて没した。

昭和51年(1976)1月16日 江東区 第31号

 

 

エレキテルとは、摩擦により静電気を発生させる蓄電器。

源内は、長崎でエレキテルを手に入れたが、それが壊れていたため、

文献を紐解いたり通詞を介して外国人から知識を得たりして7年かけて修理をした。

 

そのエレキテルを使って電気実験をしたのがこの場所らしいのだが、石碑をよく読むと、

源内がエレキテルの電気実験を行ったのは《この付近深川清住町現在の清澄1丁目私宅において》とある。

 

安政5年の地図を見ると、現在の石碑の場所は「松平陸奥守」の屋敷だから、

北隣の「清住町」あたりではないだろうか。

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石碑を通り越し少し歩いたところに、お目当てのセメント工場はあった。

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小山内薫の小説『大川端』に、このセメント工場の描写があり、

まだ現存しているらしいので見に来たのだ。

 

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主人公の正雄 ( おそらく小山内自身 ) が、お酌の君太郎に会いたいがために入り浸った料理屋から見た景色に、セメント工場が出て来る。

セメントの煙突も忘れられない。あの白い砂のやうな色をした太くまるく丈の高い怪物は、昼間は眼に痛いけむりを深川になびけたり、中洲河岸に靡けたりしたし、夜は怪しい火を縦に吹いて、正雄と君太郎とを恐れさせた。
暗の夜は煙突がまるで見えないで、赤とも紫ともつかぬ火の色が、唯中天に浮いて見えるのである。正雄も君太郎も承知でゐながら、それには幾度か新しい驚きを味ふのであつた。

春陽堂『大川端』55ページより

 

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残念ながら、煙突は見えなかった。

 

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さて。

上之橋があった所は、現在 清澄排水機場になっている。

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この地域は、隅田川と荒川に挟まれたゼロメートル地帯で、

満潮時には大部分が水面下となり、過去に多くの大水害になったのだそうだ。

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昭和33年 台風11号の時には、亀戸地帯がこんなことになりました。

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京葉道路 ( 亀戸付近 )         亀戸丁目

 

その為に作られたのが、この排水機場

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排水機場とはどういうものかというと、ポンプ施設です。

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江東三角地帯には、小名木川、大横川など堀状の内部河川が縦横に流れていて、その入口に水門が設けられている。

 

普段は開いているが、台風や津波など高潮のおそれのある時には閉鎖する。

 

水門が閉められると、内側の河川の氾濫を防止するため、このポンプで外側の河川に水をくみ出すのだそうだ。

 

排水能力は、毎分 2,880㎥。2,880㎥って、例えばお風呂何杯分なのだろう。



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江戸時代は縦横に水路が走っていたが、埋め立てられて随分少なくなった。

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それでも、いくつかの水路 ( 堀川 ) が残り、堀端が散歩道になっている。

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今では排水機場に守られて、安全な堀端。

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なかなかの景色です。

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佐賀町から 深川図書館にむかって、散歩はまだ続きます